雀のしっぽ。

ひっそり生きている

ポチ

 

 

君にまた会えるのを 僕はずっと心待ちにしていた

君はもう僕を覚えていないかもしれない

 

でも僕は 君を忘れた日は1日もなくて

君が好きな長い名前の花を見かける度

君と聞いた曲がテレビで流れる度

君の好物が店に並んでいるのを見る度

まだ隣で君が笑っているような気がして

くしゃっと笑うあの顔を探す

 

君が居なくなってから どれくらい経ったのだろうか

僕には広すぎるあの部屋で僕は

絶望した 真っ暗になった 空っぽになった

誰かに名前を呼ばれることも

誰かと外に出かけることも

何もかもがつまらなく億劫になった

 

君の寝息の聞こえない夜がこんなに長いことも

一人で食べる朝食がこんなに味気ないことも

義務的にこなす外出がこんなに退屈なことも

 僕はずっと知らなかったのだ

それはなんと幸せなことだったか

 

「ずっと一緒にいようね」なんて

そんな大切なことを容易く約束した

君にそう言われると僕はなんだか申し訳なくて

最後はどうしたって僕が君を置いていくんだと思っていた

そうしたら泣き虫な君はすごく悲しんでたくさん泣くだろうから

出来るだけ 一秒でも長く君の傍にいようとした

 

 

でも 君は僕を置いていってしまった

 

何日も 君が開けるはずのドアの前で 君の足音を待ちながら

もう君が帰って来ないことをなんとなく知っていた

どうしてかはわからない

でもどうしようもなく悲しくて

これでお別れなんだって そう理解していた

 

 

しばらくしてから 僕は引越しをした

 

あの部屋にいれば

またいつか君がひょっこり帰って来るんじゃないかと

心の隅で願っていた

それでも いつも君のいた場所が空っぽなのを見ているのは辛くて

少しだけ救われたような気がした

 

新しい家で 僕には新しい家族が出来た

お菓子の名前みたいな可愛らしい新しい名前を貰った

きっと僕は恵まれていた

それでも僕は 君がくれた 単純なこの名前が好きだった

それでも僕は 君と過ごした あの狭いアパートが好きだった

 

 

君は僕を覚えているだろうか

僕は目も鼻も悪くなってしまったけど

そこで君をみつけられるだろうか

そうしてもしまた会えたら

君が付けた名前で また僕を呼んでくれるだろうか