雀のしっぽ。

ひっそり生きている

落され物

 

私は昔からどうにも物を失くす子供だった。

 

昨日買ったえんぴつを失くした

今日配られた学級だよりも失くした

お気に入りの赤い上着も失くした

帰り道で遊んでいるうちにランドセルも失くしたし、履いて行った靴も失くした。

 

通信簿には「忘れ物、落し物をなくしましょう」なんていつも書かれていた。

 

あんなに叱られたのに、大人になっても私の落し物の癖は治らなくて

今日もまた色んなものを落として歩く。

 

居場所とか存在意義とか私を大切にしてくれる人達とか。

 

そうして、いつも失くしてから

手元になくなって、絶対に手の届かない私の知らない所へ行ってから

いつも いつも 後悔する。

 

失って死ぬほど後悔するのも、それがとても間抜けなことも

全部知っているのに 私はまた私の幸せの手を離す。

そして落とした幸せを見ないふりをして、忘れたふりをして

時折 思い出したように忘れ物リストを開いて

とても 泣く。

 

この間は、落としてきた大きなものを思い出して

懐かしんで後悔して悲しんで哀しんで愛しんで

それでね また今回も私は同じことをしそうだから

今度は、今度こそはちゃんと拾いに行って

そうしてもう失くさないように、ちゃんと掴んでいなきゃなぁって思ってた所なんだ。

 

ねえ、こんな私でもなんとか生きていけるかな。

間違って傷付けて失くして後悔してばかりだけど

また歩いていけるかな。

 

遠く離れた知らない場所で、違う世界の同じくらいの次元には居られるかな。

 

むかしのはなし

 

 

学校さぼってた馬鹿が集まってできた

‪仲良しグループがあってね‬

ホントに ホントに 仲良くてね

私は 他に居場所がなかったから 

家族みたいに大事な人たちでね

 


‪その中のひとり 女の子が病気で死んじゃってね

 


‪その子と付き合ってたやつがいてね

当たり前だけど ものすごく落ち込んでてね

 

何ヶ月も そいつ笑わなくてね
‪ずっと立ち直れないままでね‬

塞ぎこんだり いきなり怒鳴ったり 泣き出したり

ずっとそんなんでね

そのグループにいると

いつまでも死んだ子を思い出すから 

もう抜けるって言われてね

 

 

私はそいつに また 笑ってほしくてね

また一緒に遊びたくてね

 

恋愛感情とかじゃなく 純粋に大好きだったから

お兄ちゃんみたいな 人だったから

 

初めて 家のことを聞いてくれた人だったから

初めて 私の味方になってくれた人だったから

 

今度は 私が力になりたい とか

そんな くだらないこと考えてね

 

 

反吐が出るような 綺麗事を口にした。

 

 

「お前は あいつのこと そんなに好きじゃなかったもんな 本当は 死んでも なんとも思ってないんだろ」

 

って言われてね

 

 

 

グループの中で

その子とは 個人的な絡み 少ない方だったしね

 

その子 生まれつき病気持ちなのも知ってたし

結構 入退院 繰り返してたしね

 

また 入院した ってメールがきたときも

「またかよ (笑)  はやく戻ってきな(笑)」

とか 軽い 返事をして

そんな感じでね

 

死んじゃったこと聞いた時も

お葬式に行った時も

 

なんか そんなに 実感なくてね

泣きもしなくてね

 

 

「そっか 死んじゃったんだなぁ」って。

 

 

私 薄情だね。

 

ただ その付き合ってたやつじゃなくて

 

他のメンバーまで 

ことあるごとに その子の名前を出して

「あの子に 会いたいね」って軽く言うから

 

それが 私には 

「友達を失った可哀想な俺僕私」アピールにしか見えなくて

 

私は そんな風に軽く名前を出すのは

そいつの 傷を何度も抉るだけだと思って

 

 

 

だから そう言った。

 

 

 

 

 

私が 言う 「仲良し」も 「ともだち」 も

全部 ごっこ遊び みたいなものだって 言われて

 

お前 薄情だな って言われて

 

 

そうして そいつは居なくなって

そうして グループもなんとなく なくなって

 

 

薄情なのも 友達ごっこだったのも

きっとあいつが言うんだから 事実なんだけど

 

私は あの場所を

失いたくないだけだったよ

 

*

 

ただ居場所がほしかっただけで

 

私の友情って 私の愛情って

多分 偽物だ

 

 

 

︎ ┈┈✈︎ ♡

いつか作った紙飛行機が 

後ろから飛んできて自分を切り裂いた

 

何かが変わることを望んだわけじゃない

 

そりゃ 変わってくれるなら 泣いて喜ぶし

私が何かをすることでまた機会が得られるなら

迷いなく私はそれをするんだけど

 

希望がないことくらい 分かってたよ

 

分かってたけど

 

電波越しに挨拶をすることくらい

許されるかなぁなんて思ったんだ

 

 

あの時 裏切って ごめんね

 

今日 日付が変わったら

これで ホントのホントに おわり

 

懐古む

ずっと忘れたフリをしていた

本当は1ミリも忘れてなんかいなかったんだけど

 

毎日絶望したような顔をして生きているけど

この間、崖から底に叩きつけられるような出来事があって

過去のことを思い返して

もう二度と見ないと決めていた場所へ足を伸ばした

 

「あの時ああしていれば」

「どうしてそうしなかったんだろう」

と 後悔したところで

あの日に戻れるわけじゃなくて

 

私が正しいと思って選んできた道も

私が幸せだと思って掴んできた掌も

全部不正解だったこと

何もかも終わってから気付いた

 

 

去年の今頃だったら まだ間に合ったのかな。

 

 

大抵の事は

なんとなく明日を迎えて

やりたいことをやりたいようにして

あまり難しいことを考えないで

そうしていればなんとかなる

 

間違えた問いも 見落とした希望も

また拾い直せる

 

それでもどうしようもないものもあるのよ

 

自分で壊してしまった人間関係とか

切ってしまったブレスレットとか

廃盤の動かないカメラとか

 

 

私はあの日を一生悔やむ

幸せな自分を落としてきた場所を懐古む

その場所にいる誰かを羨む

 

そんなことしたって もう遅いでしょう

知ってるよ

 

だからここに居るだけ

そっと息をするだけ

 

時折また苦しくなって

届かない場所を見上げるだけ

 

後悔しないように生きたくたって

もうやり直せることも全部終わってて

 

 

ただ 遅かったんだ

 

 

 

 

檻の中の石の人

 

「助けるよ」「迎えにいくよ」

なんて言葉を 何度聞いたか

 

私には生きている理由がない

痛いのも苦しいのも嫌いだし

痛い 苦しい思いを今すぐしてまで死ぬ理由が特別なくて

 

それをその程度の苦痛と言ってしまえばそれまでなんだけど

 

私は

ただ 死ねないから生きているだけ で

私の明日に太陽は昇らない 花は咲かない

 

あの人たちの機嫌をとって

何でもないようにへらへら笑って

顔を合わせたら怒鳴られて

理由も分からず殴られて

そんな毎日がいつ終わるのか

そもそも終わりなんてあるのか

 

そうして毎日すり減らしていたら

いつのまにか 薄っぺらい感情だけが残っていた

 

私は誰かを好きだったんだろうか

私は私が好きなんだろうか

私は

 

私が 私自身の問題を処理しきれなくて

放り出しているだけのことなのは

理解している

 

理解していたところで

それを解決する術も

ヒントをくれる司会者もいないのだから

それをどうすることだって出来ない

 

昨日と同じ今日を 365回繰り返して

周りの人が 歳をとり 歩いていくのを

もう何年も同じ場所からただ見ているだけ

 

「その籠から出してあげるよ」

「その鎖を断ち切ってあげるよ」

なんて優しい言葉に 騙されてきた

 

そんな甘い話あるわけが無いこと

本当は私が一番知っていた

 

自分の何かを削って それで破片が拾えるなら

それだって良かった

 

小汚いことはいくつもしてきたし

人に言ったら引かれるようなこともしたし

私がひとりで墓場まで持っていかなきゃいけないことだらけだ

 

そして そこまでして

私の手元に残ったものは何ひとつないし

鉄の檻に傷ひとつつけてはいかなかった

 

「助けて欲しい」

「誰も私を救ってくれない」

なんて言うのは きっと傲慢だ

 

自分自身の人生を他人に投げ出して

きっと怠惰だ

 

なら 最初からそう言ってくれればいいんだ

「誰もお前を助けない」

「誰もお前に手を差し伸べない」って。

 

そうしたら

私は誰かに期待もしなかったし

きっと今頃冷たい石になって

ずっと眠っていられたのにね

 

夢日記

最近同じ夢を見る。

 

緩い長い上り坂があって、その先が手を付いて登らないと登れないほどの急斜面になってる。

急な滑り台を登ってるかんじ。

その一番上に白いフェンスがあって

私はどうしてもそのフェンスを越えて向こう側へ行きたいらしい。

勢いをつけてとんでみたり、紐をかけようとしてみたりするのだけど、届かない。

やっとフェンスに手が届いても、どうしても足が上がらずそこまで登っては行けない。

 

街全体が閉ざされているようで

他にも出口を求めて歩いている人がちらほらいる。

知っている人だったり知らない人だったり。

 

誰かがどこかの廃ビルの中に抜け道があると言っていて

私もそのビルを訪れる。

4階建てかそれくらいの小さな古いビル。

中は真っ暗で、その窓があるのもどこの部屋か分からず、階段も部屋も迷路みたいにねじれている。

 

いびつな螺旋階段を手探りで登った最上階

ひとつそれらしい部屋を見付けるのだけれど、その部屋にドアはなくただ入口があるだけ。

そして、部屋の入口手前に床はなく

私が立っている場所から2mくらいの空間を飛びこえて転がり込むしかその部屋に入る方法はない。

 

私にはそこへ飛び込む勇気がなく、しばらくその部屋の入口を眺めた後

また登れないフェンスの所で必死にもがいている。

 

そんな夢。

 

待ち人の死に人

‪よく

私が親の期待に背く度に

死産した  戸籍上存在すらしない妹のことを持ち出して‬

‪「あの子だったら、こんなことしなかった」と言われた

 

‪どんなに頑張っても

生まれてすらいない人には勝てないから‬
‪その時代わりに死んでいたのが私だったらって

何度も思った

 

そして、また。今も。

 

先に死んだ人間はずるい

 

どんなに悔しくても

どんなに悲しくても

死んでしまった人には勝てないし

死んでしまった人に縋っている人を取り戻すのは とても難しい

 

"逃した魚は大きい"  と言うように

失くして もう二度と会えない人は

良い方にしろ 悪い方にしろ 

思い出の中で 絶対的な物になっていく

 

きっと私は人間として色んな部分が欠如していて

自分が殺した命の重さも実感出来ないし

他者の死に対する感情が足りていないんだと思う

 

彼らに言われたように

「あの子」だったらきっとそんなことはしなかっただろうし

「あの子」だったら彼らの期待に応えたんだろうし

 

やっぱり代わりに私が居なければよかったんだろう

 

それでも 此処で 見苦しくも 生きてるんだよ

生きているのは 私で誰かじゃないんだよ

 

だから

絶対に勝てないし 足元にも及ばないし

超えられないのだってわかっているけど

 

また居ない人ばかり見ている人を

夢を夢じゃなくして

ずっと待ってるよ