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雀のしっぽ。

ひっそり生きている

のどあめ

朝起きると 喉が痛かった。

昨日、年甲斐もなくカラオケではしゃいだせいか

それとも風邪のひき始めか。

 

イソジンでうがいをして、家を出た

マスクはあんまり好きじゃない。

コンビニでのど飴を買った。

 

昔、楽しみにしていたデートの直前に風邪をひいて声が出なくなったことがあったっけ。

あの時もそう、こうやってコンビニでのど飴を買ったんだ。

 

銀色の包み紙を剥いて、口に放り込む。

のど飴のひんやりした舌障り。

噛み砕かないように軽く歯を立てる。

 

イヤホンを耳に詰め込んで 時刻表を見上げると

あ、雨が降ってきた。

 

「ごめん、傘入れて」

 

声が聞こえた気がして 振り返ると。

 

口の中で雨がパキンと音を立てて割れた。

薬の匂いがツンときて、涙が零ちた。

 

 

沼の底より

 

気が付いたら沼に足を取られていた

 

向こう岸の景色に欲を出して手を伸ばして

蓮の幻覚に魅せられて惑わされて

名前の知らない蝶を追いかけて

 

気が付いた時にはもう 抜け出せなくなっていた

 

おかしいな 

元いた場所が当たり前で普通の幸せだったのに

泥に染まって沈んでいくこの感覚がなんだか嫌いじゃない

 

沈んでいく私を 見ているだけの君 を見ているだけの私

きっと声をかけても 指で抗っても もう届かない

 

最初から

 

そう望んだのは 私の方だ 

 

 

 

さんぶんのに

どこかの頭痛薬は、半分が優しさで出来ているらしい。
私の半分も、優しさで出来ていたら良かったのかもしれないけど
多分そんなものはどこかに忘れてきてしまった。

 

「普通じゃない自分コンプレックス」 だから
いつも「普通」になろうとしてきた。
真っ当になろうとすればするほど
優しさとか、善意とか、愛情とか、倫理感とか、人間性とか
そういうものが分からなくなっていって
きっと私は「普通」から遠くかけ離れた醜い何かになってしまった。

 

この人が私の全て!みたいな恋愛をしたり
この夢のために全てをかける!みたいな人生が
そこら辺に転がっている安っぽい世界観

 

「普通の私」に固執して
「普通になれない私」を悲観して
「普通の誰か」を羨んで卑屈になっているうちに
「普通らしさ」を失ってしまった。

 

 

3分の2は空っぽの特に中身のない人のはなし。

落され物

 

私は昔からどうにも物を失くす子供だった。

 

昨日買ったえんぴつを失くした

今日配られた学級だよりも失くした

お気に入りの赤い上着も失くした

帰り道で遊んでいるうちにランドセルも失くしたし、履いて行った靴も失くした。

 

通信簿には「忘れ物、落し物をなくしましょう」なんていつも書かれていた。

 

あんなに叱られたのに、大人になっても私の落し物の癖は治らなくて

今日もまた色んなものを落として歩く。

 

居場所とか存在意義とか私を大切にしてくれる人達とか。

 

そうして、いつも失くしてから

手元になくなって、絶対に手の届かない私の知らない所へ行ってから

いつも いつも 後悔する。

 

失って死ぬほど後悔するのも、それがとても間抜けなことも

全部知っているのに 私はまた私の幸せの手を離す。

そして落とした幸せを見ないふりをして、忘れたふりをして

時折 思い出したように忘れ物リストを開いて

とても 泣く。

 

この間は、落としてきた大きなものを思い出して

懐かしんで後悔して悲しんで哀しんで愛しんで

それでね また今回も私は同じことをしそうだから

今度は、今度こそはちゃんと拾いに行って

そうしてもう失くさないように、ちゃんと掴んでいなきゃなぁって思ってた所なんだ。

 

ねえ、こんな私でもなんとか生きていけるかな。

間違って傷付けて失くして後悔してばかりだけど

また歩いていけるかな。

 

遠く離れた知らない場所で、違う世界の同じくらいの次元には居られるかな。

 

泣いていたから

 

今までの声は、君の嘘だと知っていた。
嫌われぬように。消されないように。

 

今までの声は、君の助けだと知っていた。
離れないように。信じられるように。

 

それでも君はまるで幸せみたいに、手を振って背を向けた。

最期に目に映った君の横顔が歪んで見えたのは、

胸に秘めた想いなど知らない。僕は君の何だっていうの。


たった独り残された世界で、要らないのは僕だけなの。
会いたいよ。

 

手紙を書こうか。僕の忘れたくないこと。
恥ずかしい過去を、誇れない今日を。

 

文字になった僕のずっと嫌っている人生は、
望まれているかな。愛されているかな。

 

答えをくれる人すらここには居なくて、自分を見るのは辛いから、
眼を閉じてみるんだよ。その世界に君がいたなら。 

 

重ねてきた想いを知らせたい。僕に意味を与えるために。
きっと叶わない願いだと解っている。どんなに強く叫んでも聞こえない。

 

理由づけ 得意分野 人の狡いとこだけ盗んだ
不公平な出来レース 表彰 他人を蹴落として笑った
なんて素敵な世界だ 負けっぱなしも厭わないさ
戻れない 変わらない

 

胸に秘めた想いなど知らない。君が僕を要らないと言っても。


そうだ、嘘つきで助けを呼んだのは、弱いままの僕の方だよ。

 


会いたいよ、今だけ。

 

 

*

 

 

むかしのはなし

 

 

学校さぼってた馬鹿が集まってできた

‪仲良しグループがあってね‬

ホントに ホントに 仲良くてね

私は 他に居場所がなかったから 

家族みたいに大事な人たちでね

 


‪その中のひとり 女の子が病気で死んじゃってね

 


‪その子と付き合ってたやつがいてね

当たり前だけど ものすごく落ち込んでてね

 

何ヶ月も そいつ笑わなくてね
‪ずっと立ち直れないままでね‬

塞ぎこんだり いきなり怒鳴ったり 泣き出したり

ずっとそんなんでね

そのグループにいると

いつまでも死んだ子を思い出すから 

もう抜けるって言われてね

 

 

私はそいつに また 笑ってほしくてね

また一緒に遊びたくてね

 

恋愛感情とかじゃなく 純粋に大好きだったから

お兄ちゃんみたいな 人だったから

 

初めて 家のことを聞いてくれた人だったから

初めて 私の味方になってくれた人だったから

 

今度は 私が力になりたい とか

そんな くだらないこと考えてね

 

 

反吐が出るような 綺麗事を口にした。

 

 

「お前は あいつのこと そんなに好きじゃなかったもんな 本当は 死んでも なんとも思ってないんだろ」

 

って言われてね

 

 

 

グループの中で

その子とは 個人的な絡み 少ない方だったしね

 

その子 生まれつき病気持ちなのも知ってたし

結構 入退院 繰り返してたしね

 

また 入院した ってメールがきたときも

「またかよ (笑)  はやく戻ってきな(笑)」

とか 軽い 返事をして

そんな感じでね

 

死んじゃったこと聞いた時も

お葬式に行った時も

 

なんか そんなに 実感なくてね

泣きもしなくてね

 

 

「そっか 死んじゃったんだなぁ」って。

 

 

私 薄情だね。

 

ただ その付き合ってたやつじゃなくて

 

他のメンバーまで 

ことあるごとに その子の名前を出して

「あの子に 会いたいね」って軽く言うから

 

それが 私には 

「友達を失った可哀想な俺僕私」アピールにしか見えなくて

 

私は そんな風に軽く名前を出すのは

そいつの 傷を何度も抉るだけだと思って

 

 

 

だから そう言った。

 

 

 

 

 

私が 言う 「仲良し」も 「ともだち」 も

全部 ごっこ遊び みたいなものだって 言われて

 

お前 薄情だな って言われて

 

 

そうして そいつは居なくなって

そうして グループもなんとなく なくなって

 

 

薄情なのも 友達ごっこだったのも

きっとあいつが言うんだから 事実なんだけど

 

私は あの場所を

失いたくないだけだったよ

 

*

 

ただ居場所がほしかっただけで

 

私の友情って 私の愛情って

多分 偽物だ

 

 

 

︎ ┈┈✈︎ ♡

いつか作った紙飛行機が 

後ろから飛んできて自分を切り裂いた

 

何かが変わることを望んだわけじゃない

 

そりゃ 変わってくれるなら 泣いて喜ぶし

私が何かをすることでまた機会が得られるなら

迷いなく私はそれをするんだけど

 

希望がないことくらい 分かってたよ

 

分かってたけど

 

電波越しに挨拶をすることくらい

許されるかなぁなんて思ったんだ

 

 

あの時 裏切って ごめんね

 

今日 日付が変わったら

これで ホントのホントに おわり